青い花 第3話「朝目覚めては」

ふみちゃんと杉本先輩の初デート話と、初キッスの話。
そして、あーちゃんの初合コン話(あーちゃんにとっては散々な結果)。

今回も、非常に素晴らしい出来だった。

冒頭で、ふみちゃんと杉本先輩が2人で会話しているところが描かれる。杉本先輩はふみちゃんに積極的にアタックをかけ、ふみちゃんのことを「好みだ」と告白し、ふみちゃんが「そんな…冗談」と言うのを遮り、畳み掛けるように「私…本気で言ってるよ」と話す。
その次に、藤ヶ谷3人娘の視点に切り替わり、ふみちゃんと杉本先輩がいいムードで話しているところを遠くから捉える。すぐに、ポンちゃんがふみちゃんに声をかけて、2人の会話に水を差す。

それからしばらくして後、ふみちゃんの部屋の場面になる。ふみちゃんはぼんやりした様子でベッドに寝そべり本を読んでいたが、やがて思い切った様子で、髪を結わえ、部屋の模様替えを始める。
模様替えを終えても、まだ落ち着かない気持ちが覚めやらない感じでふみちゃんは立っている。そして、杉本先輩との会話を思い出す。

(ふみちゃんの思い出はモノクロ画面として見せている)
「私…本気で言ってるよ」
「…ね、デートしようか? 日曜日、誰かと約束ある?」
「…空いてます」
「じゃ、決まりだ。鎌倉駅で、10時でどう?」
ここで、ポンちゃんが「万城目さーん」と呼びかける場面に繋がる。
(ここで、回想終わり)

ふみちゃんはベッドに転がり、少し頬を紅潮させながら、「明日…何を着ていこう?」と、明日のデートに密かに胸を躍らせているのだった。

杉本先輩のデートの誘いを冒頭に置かず、敢えてデート前日のふみちゃんの「思い出」の中で見せることで、ふみちゃんが杉本先輩のデートに向けて、じわじわと気持ちを高まらせていくことを表現しているのだろう。改めて、高山文彦の構成の巧さが非常に光っている。

また、今回は井汲京子(堀江由衣)が非常にいい演技をしていた。藤が谷にいる時の、いかにもお嬢様のような喋り方、康ちゃんに対する、少々つっけんどんだけれど、心を許しているからできるフラットな喋り方、そしてまだ幼少だった頃の、か弱い子供の声 ― その時々に応じた「違った」喋り方ができている。当たり前のことのようだが、実はなかなかに奥が深く、難しい。
スタチャお抱えのアイドル」というイメージが強く、また実際に主題歌付きで「スタチャ」の主役作品によく出ていたということもあり、堀江由衣に対してはこと演技という点に関してはあまり評価されてこなかったように思う。しかし、個人的な印象としては「十兵衛ちゃん2」あたりからスタチャ作品以外の作品にも多く登場するようになり、またちょうどその頃から従来の声の良さが評価されるようになり、演技の幅も広がっていったように思う。

ここ数年は「とらどら!」の櫛枝実乃梨や、ちょうど「青い花」と同時期に放映していた「うみねこのなく頃に」の右代宮真里亞での好演が記憶に新しい。第4回声優アワード賞受賞も納得である。

ちょっと話が逸れた。

今回は作画も特徴的だ。ふみちゃんがベッドで寝ているところ、またふみちゃんが文芸室で座っているところ等、いくつかの場面で、ふみちゃんの髪の一本一本が細かく、密度が高く描かれている特徴的な絵が目立つ。これが、実にエロティックで、素晴らしい。作画監督は今話では2人制で、「藍より青し」でもいい仕事をした岩倉和憲と、冨岡寛である。そして、この特徴的な髪の毛は、おそらく冨岡寛の手によるものであろう。実に、いい仕事をされている。

また、ちょっとしたディテールや、細かな動作に、非常にリアリティがあり、それが本作の大きな魅力となっている。たとえば、デート前日で気分が紅潮したふみちゃんが、ついつい「髪を後ろに結って、部屋の模様替えをする」という動作を行うのは、男性作者であればなかなか描けなかった視点であり、だからこそ「リアリティがある」と思える。
あーちゃんとあーちゃん兄の兄妹喧嘩を延々と映しながら、京子/康ちゃんとの会話の中で、「兄貴がついてきたことでいきなり泣き出したこと」「結局、その兄貴と一緒に家に帰ったこと」について、2人であーちゃんが可愛らしいと褒めあう場面があるが、その場面も面白い。散々喧嘩しながらも、外の人間から見たら、なんだかんだで兄/妹が仲の良いように見えているところも、確かに現実にそういった関係性は多くありそうで、リアリティや説得力のある関係性となっているのも、面白い。

ふみちゃん/あーちゃんの日常を描いているだけなのに、第3話にてふみちゃんと杉本先輩の初キッスが描かれ、意外にも速い展開で進んでいる。次は一体どこまで進むのだろうか?楽しみで仕方がない。

青い花 第2巻 [DVD]

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