青いブリンク 第1話「はるかなる出発」

手塚治虫原作・総監督のアニメ作品で、手塚治虫のアニメとしての遺作となった作品。(第5話のあらすじを書き上げた段階で、手塚治虫は急逝してしまった)また、名作「ふしぎの海のナディア」の前番組でもある。

第1話では前半で少年カケルと不思議な雷獣ブリンクとの出会いが描かれ、後半でカケルの父親春彦が創作した絵本の中の登場人物グロス皇帝が何故か実体化し、春彦の身柄を奪ってしまうこと、そしてカケルはブリンクや、道すがら出遭った仲間たち(バスの運転手丹波にコソ泥のニッチとサッチ)と一緒に父親を取り戻す冒険に出かけていくところが描かれる。

1話で「不思議な生き物との出会い(一緒に冒険する仲間ができる)」「父親がグロス皇帝に身柄拘束される(冒険の契機)」そして実際に冒険に出発し、1つの冒険をクリアするところまで描いてしまった勢いは買うものの、全般的に説明不足感が否めず、小さい子供はおろかわたしのようないい大人ですら、「これ、どうなってんの?」と観ながら大いに戸惑ってしまった。

おそらく、父親は現実世界とは別次元の世界に連れ去られていったという設定なのだろうし、またカケルもその後を追って別次元に向かっていったのだろうが、その境目がきちんと描出されていない。
ブリンクに跨って駆けていくところで、山道の中から急にハイウェイが現れるのを「異次元に踏み込んでいく」場面として演出したかったようだが、あまり上手くいっているようには見えない。むしろ、ハイウェイの出現を唐突に感じ、一瞬何が起きたのか戸惑ってしまう。

本作品の発表は98年であり、この時点で「異次元の存在が、普通の人間を日常世界から異次元へ連れて行く」というシチュエーションは、他作品でいくらでもリファレンスがあったはずである。(同年に発表された「ピーターパンの冒険」では、そのあたりをずっと上手く処理できている)

他にも、展開を急ぎすぎて、トンチンカンだったり、唐突だったりする部分が目立った。(挙げていけばキリがないが、たとえば丹波が最初は「動物は乗せられない」と言ったのに、ラストの場面でブリンクは平気で自分の姿を丹波の前に見せているし。で、バスに乗っているところでは、ブリンクは毛玉に戻っているし)第一の冒険も、内容的にも演出的にもただただショボく、全く盛り上がらなかった。

正直、手塚治虫が本格的に関わったアニメ作品としての遺作、という点以外では見続けていくのが辛い出来であるなぁ。まぁ、頑張って見続けるけど。50%くらいの力で。

あ、でもいかにも手塚らしい丸っこい線のキャラクターデザインは非常に良かったな。(手塚自身がキャラデザを手がけているので当たり前だが)
また、冒頭で毛玉状態のブリンクが水溜りに飛び込むシーンがあるが、水しぶきの中にたくさんの水泡が描かれていて、その細かな描写・表現がいかにも手塚治虫の漫画らしかった。手塚の漫画的表現をアニメとして観ることができたのは、手塚ファンの私としては単純に嬉しかった。