青い文学シリーズ 人間失格 第1話「鎌倉心中」

日本文学の名作を、従来の概念に縛られることなく、「日本文学」=「青さ」というキーワードをもって、そのジャンルが本来持っていた魅力を若い人に新鮮に感じ取ってもらうために制作されたアニメ化作品………と理解していたつもりだったのだが、観始めて1分も経たないうちに、「俺、買いカブり過ぎてたか?」と反省してしまった。

とにかく、物語全般的に陰鬱で、映像自体も暗い。これでは、「人間失格」が本来持っていた魅力を新鮮なものとして伝えるどころか、一般的に本作が持たれている陰鬱なイメージをなぞっているに過ぎないのではなかろうか? また、せっかく小畑健をキャラクター原案に据えながらも、アニメーションのキャラクターデザインにする際には小畑健の色が皆無と言っていい程消えてしまっているのも良くない。これでは、小畑健というより、アニメ版BLACK LAGOONの絵柄になってしまっている。(つまり、筱雅律の絵柄になってしまっているということだ)

また、主人公である葉蔵の少年時代の映像も、変にノイズや黄色いフィルターがかかったりしてエフェクトをつけ過ぎで、見辛い上に少々やり過ぎな感がある。

太宰治の作風は、一般的には陰々鬱々と重苦しいものと思われているが、意外にユーモラスな部分も多く、それこそ現代においてもライトノベル感覚でサクッと読むことができるような、数少ない「古典の日本文学」である筈なのだ。少なくとも、「人間失格」においては、むしろ若い人を遠ざけてしまうという意味で、本来の目的から逆効果になってしまったのではないか、と考えざるを得ない出来となっている。

もっと、フラットな作りで良かったのに、どうしてこうなってしまったのだろうなぁ。浅香守生が手がけるということで、観る前段階では割と期待していたのだが、まるで浅香作品ではなく、設定イメージ原案に関わっている浜崎博嗣の色合いが濃厚に出てきているようだった。設定イメージ原案というのが具体的にどういった仕事かは想像する他ないが、単に昭和時代の時代考証や舞台設定だけでなく、葉蔵の主観イメージなど作品の全体的トーンを含めた部分まで入っていたのかもしれない………と邪推したくなるくらいの、浜崎カラーだったな。これを後3話も観なければならないと、ちょっとどんよりとしてしまうよ。

青い文学シリーズ 人間失格 第1巻 [DVD]

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