愛の戦士レインボーマン 第37話「Xゾーン破壊命令!!」

オルガ&ロリータのレインボーマン暗殺作戦、及び死ね死ね団が密かに「ニトロン」と呼ばれる凶悪な破壊兵器の元となる物質を大量生成するための陰謀を進める話。

しばらくはややおとなしめなトーンが続いていたレインボーマンであったが、この話では最初にあった「気の狂った、カオティックなトーン」が戻って来ていて、非常にいい感じだ。
前話でのトラウマから、タケシが恋人淑江に、周りにいる全ての人間が「暗殺者」に見えてしまう状態にあり、ノイローゼでどうにかなりそうだと告白し、苦悶した顔で頭を抱える場面は、杉谷邦久のバタ臭い顔と演技と相まって、非常に「レインボーマン」らしい「濃ゆさ」が出ていて、良かったな。また、オルガ&ロリータがバイクに乗って公園を歩いているタケシに近づき、白昼堂々と拳銃で暗殺を仕掛け、流れ弾に当たってバンバン周りの人が死んでいく場面も凄かった。これまで、何故か人気の少ない場所で戦闘を行ってきたレインボーマン死ね死ね団であったが、ここに来て人がたくさんいる中で、しかも周囲の無関係な人間が死んでも全く構わないといった感じで、オルガ&ロリータがレインボーマンを暗殺にかかろうとする場面が出てくるのは新鮮であったし、死ね死ね団の狂気がよく現れていた。
そのクセ、タケシの恋人淑江を誘拐しようと幼稚園前まで来るも、ヤッパの鉄が通りかかっただけで諦めて逃げてしまったりするなど、行動性に一貫性が見られないところがあって、詰めの甘さは感じさせられたけれど。(流れ弾で人を殺すのを気にしない程のタマなら、何故、邪魔に入ってきたヤッパ鉄を殺さない?)

また、死ね死ね団が新たに展開しようとする作戦も面白い。「ニトロン」というのは明らかに「プルトニウム」を暗示した言葉なのだけれど、それが「石鹸と石炭」で大量精製できちゃうというトンデモ設定が面白い。また、石炭を大量に入手するために、炭鉱を開いて国中の労働者を好条件で集めるという作戦も、レインボーマンらしく地に足の着いたリアリティある作戦で興味深い。

レインボーマン放映時の72〜73年は、最盛期に比べて落ちたとは言え、まだまだ日本の炭鉱も現役で稼動していた時代であったようだ。また、石油と異なり、「日本国内で賄えるエネルギー資源」として、当時の人々は石炭に対してまだ期待を持っていた時期だったのではないかと推察される。(国内の石炭生産量については以下URLを参照)

http://www.nedo.go.jp/sekitan/database/country/c0020-2b.html

こうやって、当時の時代背景や、その時代に生きた人々がその時に何を感じ、考えたのかも想像して観ていくのも、また非常に楽しい。昔の特撮ものは数多くあれど、そういった観方を寛容できるのはあまり多くはないように思う。「レインボーマン」が当時の時代背景をきちんと(おそらくは意識的に)色濃く反映させていた作品だからこそだろう。

あー、後々、アイキャッチ直前でタケシ&淑江が仲良さそうに歩いている場面で急にアート写真のように画面に靄がかかるが、これは「ラブシーン」を現しているのだろうな。2人が見詰め合う場面がアップになり、お?コレはこのままいくか?と思っていたら、2人はそのまま額をぶつけ合い、笑いあう場面でアイキャッチに入ってしまう。やはり、子供向け作品には、キスシーンは入れられなかったということなのだろう。残念だが、ここまで踏み込んで描いてくれたことには、むしろ賞賛すべきだろう。