青い花 第4話「青春は美わし」

ふみちゃんがあーちゃんに、杉本先輩と付き合っていることを告白する話。そして、「図書館の君」というキーワードが出現し、杉本先輩が過去に各務先生のことが好きで告白していたことが示唆される回。

やはり、構成が巧い。キーポイントとなるセリフ1ヶ所を敢えて物語の時間軸の流れから外し、後のタイミングで挿入することで、ドラマを効果的に盛り上げていく。京子の各務先生への質問内容「杉本先輩が藤が谷を辞めた理由をご存知でしたら、教えていただけませんか?先輩…私には何も話してくれないんです」がそれにあたるだろう。また本話の最終場面となる各務先生の呟き「さしずめ…図書館の君というところか」も、具体的な繋ぎの箇所はなかったものの、過去の時間軸において先生が話したことを、現在の時間軸上で唐突に挿入されることで、ドラマ的に大きな効果を産んでいる。(もっとも、ふみちゃんの「先輩…『図書館の君』って、誰のことなんですか?あだ名をつけた先生と、あだ名をつけられた生徒って、誰のことなんですか?」というモノローグの後に続いているので、観客に違和感を露とも感じさせることがないのがミソである)

ふみちゃんの、いかにも思春期の女の子らしい「面倒臭さ」が丁寧に描出されているのも面白い。杉本先輩と一緒に登校する時に思い切って髪を三つ編みにしてみたかと思うと、「先輩とあーちゃんとの登校の約束のバッティング」事件があった翌日には、元に戻して髪を下ろしてきちゃったりするところも、ふみちゃんの「面倒臭さ」がよく出ている。また、やはりバッティング事件の後、あーちゃんと一緒に喫茶店にいる場面で、バッティングしたことを悔やんでいるふみちゃんに、せっかくあーちゃんが「じゃあ、3人で一緒に行く?」と問いかけているのに、「いや!あーちゃんと一緒に行く!」と駄々をこねる子供のように机に突っ伏すところなど、ふみちゃんの面倒臭さが出ていて、実に良い。

その一方で、京子があーちゃんには、歳は同学年だけども「大人の女性」といった余裕さを見せているが、実際には杉本先輩のことでメソメソ考えたり悩んだりしているというギャップも面白い。

また、杉本先輩のスタンスも面白い。やはりバッティング事件の直後、杉本先輩はふみちゃんに対してこのように言っている。
「まるで小学生みたいな話だな」
また、登校はあーちゃんとするというふみちゃんの要望を聴いて、こうも返している。
「仲良しグループから外れでもしたら大変だ」
そして、行きはあーちゃんに譲り、その代わりに帰りは自分の方を選んでくれとふみちゃんに頼んだ後、ふみちゃんに言ったのか、モノローグなのか、杉本先輩は以下のセリフを述べる。
「女の子は面倒臭いよ」

この一連のやり取りから、杉本先輩がふみちゃんのことを「いかにも女子高にたくさんいるような、群れで生活する女の子」と見なした発言である(実際にはふみちゃんはそういった種類の子ではないが)。逆に言えば、杉本先輩は、自分はそういった「いかにもな女の子」ではないとの自覚を持っているということだろう。(それは、杉本先輩の最期の呟きからも証明される)

また、杉本先輩が藤が谷女の子三人組+ふみちゃんを連れて、松岡演劇部に来た際に、
「またずいぶんお供を引き連れて来たねぇ」
とからかわれるが、杉本先輩はそれに動ぜず、
「私のお気に入りなんでねぇ。どこでも連れて回るよ」
とサラッと答えている。それに対して、「君は王子様か!」というツッコミを入れられるが、まさにその杉本先輩の発言から、杉本先輩がかなり意識的に「女子高の王子様」としてのポーズを取っていることが察せられる。
そういったポーズを取っている杉本先輩だからこそ、彼女が中学時代に各務先生に普通の少女らしく恋していたという事実が、より一層切なく感ぜられるのである。
杉本先輩も、また別の観点で、非常に「面倒臭い女の子」だったのだ。

このように面倒臭い女の子がたくさん登場するからこそ、裏表がないあーちゃんの存在が非常に活きてくる。「面倒臭いところ」はないものの、決して鈍感ではないために、ふみちゃんが抱える「面倒臭さ」をあーちゃんがどう対峙していくのかが、直近の大きな物語の焦点の1つとなるであろう。

語ろうと思えば、いくらページがあっても足りない気がする。つまり、それだけ豊潤で、素晴らしい作品ということだ。