藍より青し 第9話 一夜〜ひとよ〜

ティナ・フォスター登板回。To Heartレミィに代表されるような、「無遠慮で元気な外人キャラ」というピンポイントな属性を持っている私にとって、実はティナはどストライクなキャラ。だから、ティナがメインを張る回は素直に嬉しい。

写真部鈴木が携帯電話から桜庭館から電話をかけてくる場面があったが、本作品放映時2002年の段階で普及率は既に半分以上超えていて、特に若年者層では「持っていて当たり前」のような状況になっていたように思う。だから別段驚くべきことではないが、むしろ第7話の段階で、何故に薫は妙ちんを探すのに携帯電話を使わなかったのかが不思議に思う。まぁ、薫の家自体が(一人暮らしのアパート住まいで当時としては珍しくも)固定電話をつけていたので、薫は固定電話派だったということだろう。(原作の連載自体が開始されたのが1998年だったということで、アニメの時代感と多少のタイムラグが生じていたことが大きいのかもしれない)

(参考資料↓)
http://www.garbagenews.net/archives/846122.html

話題がヘンな方向に行ってしまった。この話ではティナの内面にクローズアップして描かれている。やはり感動的なのは、ティナと薫との出会いだろう。ティナは薫と出あって間もない頃に、寂しそうに感じている薫の内面に気づき、何とかして元気にしたいと思い写真部に誘ったことが明かされる。その告白話のすぐ後に、ティナが捨て猫をじっと眺めているフラッシュバックが流されることにより、ティナが薫に対して抱いている感情は、ティナの「捨て猫に対する気持ち」に近いことが分かる。
と書くと、弱い者に対する哀れみの視線と捉えられてしまいそうだが、そうではない。ティナ自身が今話で、暗闇が怖いという理由で薫に添い寝をさせたり、神社の鈴を鳴らしたいと駄々をこねたり、薫に思いっきり甘えているのだ。それと同時に(むしろ、薫の心の中に思いっきり踏み込むことで)薫に甘えて貰いたいという「母性」の気持ちを強く持っているのだ。(だからこそ、ティナは「母性」の象徴として、葵に憧れると呟くのだ)

第5話でティナが薫にじゃれついている様子と、ティナが猫にじゃれついている様子が、葵の眼にオーバーラップして見えてしまうという演出が出てくるが、今回の話にはその演出が見事に薫=ティナの上記場面に繋がってくる。また、第8話で「ティナがペットショップでついついフェレットを買ってきてしまうこと」や、「ティナが、フェレットが薫に似ていると言ったこと」も、見事にここの場面に繋がってくる。また、1対1の濃密な恋人関係を前面に出すことで視聴者のハートを掴んできた「藍青」が、ここにきて早くも「家族的共同体」というテーマが見え出しつつあるのも興味深い。

一見、緩やかな構成で、温い話を流しているように見えながら、実は要所要所で視聴者に目立たないように演出・セリフに重要なポイントを設けていること、その演出・セリフに明確な一貫性を持たせていることは、なかなかできることではない。本作のように24話も長丁場の作品においてそれが実現できているということは、本作のスタッフの作品に対する熱意と卓抜した技量のなせる成果であろう。見た目以上にしたたかな作品で、今作品が私が大好きである理由が、少しずつ解けてきたような気がする。