ああっ女神さまっ[OVA版] 第1話「MOONLIGHT AND CHERRY BLOSSOMS」

2005年にスタートしたTVシリーズ版より前、1993年から1994年にかけて作成されたOVA版。

この頃から「合田浩章監督/松原秀典キャラクターデザイン・作画監督」の基本体制は変わらず。TV版と比較すると、初期藤島康介の絵柄に近く、眼がやや大きめに描かれていて、だいぶ可愛らしい/柔らかい印象になっている。輪郭もTV版ほどシャープではなく、丸みを帯びた感じになっている。

OVAということもあり、作画にはかなり力が入っている。蛍一の「君のような女神にずっとそばにいて欲しい!」という願いに対して、天空からまっすぐベルダンディの元に一筋の光が降りてくると共に、ベルダンディが空中にふわっと浮かび、ベルダンディを中心になって大風が巻き起こり、周囲の物体が風でくるくる回される、という有名な場面がある。そこの描写も実に緻密で、ねちっこく描かれており、見応えがあった。また、蛍一たちが住む寺に隣接する家の精に呼びかけて、家が自助修復する場面があるが、ここでも古い建物がみるみる再生されていく様を精緻に描出しきっていた。

TV版でも、蛍一たちの家が自助修復される場面が描かれるけれど、そこではCGが全面的に使用されていた。TV版の方も、CGの使い方として面白かったし、見せ方も上手かったと思うけれど、OVA版での手描きの描写も味わい深くて、なかなか良かったな。ちなみに本描写はアニメ版オリジナルで、原作にはなかった描写。OVA版/TV版双方に入っているということは、スタッフ的には重要に思っている箇所ということなのだろう。確かに、この場面では、ベルダンディが大きな力を(観客に)分かりやすく見せるところであり、と同時に、ベルダンディと見えない精霊たちとの深い繋がりが明示される箇所となっている。

蛍一のお人よしなキャラクターや、蛍一とベルダンディとのお互いを思いやる清らかな関係性も、最初からブレがないまま進んでおり、そのキャラクターの前提に沿った演出がなされている。OVAの時点から、ガチャガチャと派手な方向には行かず、しっとりとキャラクターの心情を丁寧に掬っていくことを第一に心がけた方向で進めている。

OVAという制約もあって物語のスピードが速すぎてしまったのは残念なところ。(原作にあったお寺の住職のエピソードをオミットする=あれだけの広大な寺・土地が誰の手にもつかず放置されていた、でも鍵は開いていた、という設定はいささか乱暴に過ぎる)

まぁ、OVA版では掬いきれなかった部分をTV版できちんとやり直したことを考えれば、今さら文句を言うべきところではないかもしれない。当時を考えれば、OVAとしては他作品と比較して抜きん出て優れた作品だったのだろうと想像される。当時は、結構ヒドイ出来の作品が多かった記憶があるけれど、この作品は今観てもさほど遜色なく/違和感なく観られるものね。それだけでも、十二分に立派と言えるであろう。

ああっ女神さまっ DVD-1

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