AIKa R-16:VIRGIN MISSION3 ディープ・ブルー・ガール

蝶をかたどった数字の羅列だの、脊髄に張付いて少女たちを操っていた謎の物体だの、カレン先輩と呼ばれる謎の少女とその周辺だの、第1話でさんざん面白そうなフックを仕掛けておきながら、それらのきちんとした説明はなされないまま、手垢塗れになったSF設定でお茶を濁されてオシマイ、というような話であった。

カレンの身体自身が秘密の扉を開けるパスワードになっているところ、カレンが実はクローン人間であり、何人ものカレンと同じ姿かたちをしたものが藍華たちを襲ってくるところなんか、いかにもルパン三世に出てきそうな安っぽいSF的エピソード/SF的展開だ。ルパン三世は、一種の吉本新喜劇だからそれでもいいのだろうが、謎解きやアクションそのものが売りとなるハズの本作品では許されるはずもないだろう。たとえ、B級テイストが本作品の狙いだったとしてもだ。

大体、何で大塚明夫声のあの男は裏で刺客を操ってカレン先輩を襲ったのか、そのクセ藍華たちが目的地にたどり着いてからは一切手が出せなかったのか、藍華たちが海底に眠る遺跡に侵入する前に、先に入り込んでいた人物は誰であったのか、そもそも「カレン先輩の出生の秘密」が隠された複雑な暗号をカレン先輩の胸に仕込んだ理由は何なのか、ツッコミを入れようと言えば、いくらでも挙げられるだろう。それらのツッコミに対して、作品中では明かされなかったものの、ある程度の回答は用意していそうな風にも見える。だが、たとえば次シリーズに謎を持ち越すのであれば、観客に次を期待させるような明示的なフックを作品中に作りこむ必要があったのではないか。この作品の体では、単に伏線を回収しないまま、尻切れトンボで話が終わったように見えても仕方ないであろう。(次シリーズを作ることが正式に決定されていない以上、明示的にフックを作れない大人の事情があるのかもしれないが、まぁそれは他のどの作品でも乗り越えるべきハードルだからなぁ)

最初に仕掛けておいた謎を全てうっちゃっておきながら、後半の展開がほとんどエヴァンゲリオンになってしまっているというところが、やっぱりいちばん白けてしまうところだったよなぁ。クローンのカレン先輩が何人も出てくる場面や、巨大なカレン先輩が現れる場面なんか、どう見たってカレン先輩=綾波レイの模倣ということが明らかだもの。AIKa Trial5でも露骨なエヴァのパクリがあったけれど、アレには(どんなにグダグダであったとしても)一応の展開や工夫はあったもの。

ところで、最終話で触れるのも何だけど、オープニングの場面でやはりAIKa Trial6にあった「藍華の頭上を飛行機が通り過ぎていく場面があった。このオープニングでも、『飛行機が前から来る/頭上を通り過ぎる/飛行機が後ろへ通り過ぎていく』の3カットを数秒で描写していた。AIKa R-16の舞台はずっと海であり、物語中に藍華が飛行場に行かなければならないと想起される伏線すら一切出てこない。にもかかわらず、オープニングにこうした場面があるというのは、理由としては2つだろうと考える。1つは、スタッフの中に、単に飛行機好きの人間がいるということ(苦笑)。そしてもう1つは、AIKaという作品のスタンスがこの場面によって象徴的に打ち出されているということだ。(ひょっとすると、スタッフはそこまで自覚的になっている訳ではないかもしれないが、結果として本シーンはAIKaという作品の基本スタンスを明確に打ち出されたカットとなっている)

[総評]

最初の期待が大きかっただけに、物語も、演出も、だんだんと尻すぼみになっていくのが非常に残念であった。AIKaという題材はすごく面白くなりそうな可能性はあるし、16歳のキャピキャピしたAIKaのキャラクターや、小清水亜美の元気な演技も、方向性として間違っているとは思わないので、もし次シリーズが作られるのであればスタッフの方々には奮起して、今度こそきちんとした作品を作って貰いたい、、、って、もう「AIKa ZERO」があるんだよね。どうやら「AIKa ZERO」ではAIKaが19歳の頃の物語が展開されるとのこと。うーん、なるほど。これは早いところ観てしまわなければ。

ということで、近々「AIKa ZERO」についても書きます。

AIKa R-16:VIRGIN MISSION 3 (最終巻) [DVD]

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