AIKa Trial6 白銀のデルモ作戦

Trial5同様に、うっすぅ〜い内容ではあったが、エンターテインメントとしては遥かにこちらの方がよくできていた。デルモ軍団と、パンモロと、カッチョよくキレの良いアクションさえあれば、それだけで一級品の作品ができるということを、改めて知らされたよ。

藍華たちが飛行場に着いた直後のシーンで、藍華が登場することになる探査機がその飛行場に到着する場面が面白い。

デルモ艦長のセリフ「あれが、あなたにお乗りいただく探査機ですわ」を受けて、探査機が藍華たちがいる方向に近づいていく方向で飛んでくるカット…1つめ
藍華たちの頭上を探査機が通り過ぎていくところを、超煽りのショットでとらえたカット…2つめ
藍華たちから離れる方向で探査機が飛んでいき、それを藍華たちが見送っているカット…3つめ
この間、わずか2〜3秒である。わずか2〜3秒の間を、しかもただ単に探査機が上空を通り過ぎるカットのために、3カットも費やしているのである。(しかも、この探査機は、実際には本編では一切使用されることはないのだ ! ) 勿論、探査機のディテールはしっかり描かれ、作品の中でも力の入っている場面であることが分かる。

「2〜3秒の間に詰め込まれた3カット」というタイミングとカット数は非常に重要である。何故なら、この場面を観ることで、まさに前から来た飛行機が自分の頭上を飛んでいく感覚そのものをヴァーチャル的に体験できるからである。飛行機が頭上を飛ぶとした際に、当然視点は「前から飛行機を見る」「通り過ぎた飛行機を見る」そして「頭上の飛行機を見る」の3点が必要になる。また、それまでの時間はわずか2〜3秒で行われるに違いない。もしこのカットが後数秒長かったり、カットが2に減らされてしまったりすると、観客が感じることのできる「リアリティ」はあっという間に損なわれてしまうだろう。だからどうしても、ここでは「2〜3秒の間に詰め込まれた3カット」である必要があったのだ。

その後、探査機が飛行場に到着した際に、そばにいる藍華たちの服が風で揺れたり、デルモたちが風でパンモロになっている場面もいい。地味でさりげないが、ものの動きに繊細なアニメータならではの感覚が出ている場面である。

この飛行場のシーンは場面ごとカットするシーンであるかもしれない。少なくとも、一般的な作品としては、そうすべきであろう。しかし、AIKaは違うのだ。AIKaは、テーマ性や物語性云々の一切を排除し、ディテールへの偏愛を突き詰めていくことによって、エンターテインメントへ昇華する、正しい「バカアニメ」なのだ。そして勿論、飛行機の空中シーンは、デルモたちのパンモロと同様、スタッフやAIKaの正しいファンたちにとっては、偏愛すべきディテールであり、だからこそ当然、こういったありきたりの場面でも3カットも粘着して描出するのである。

アツくなって、冒頭の飛行場のシーンだけで長々と語ってしまったよ。カット割りがいつにも増してねっとりと拘りが入っているところや、やたら難しい超煽りなど作画的に難しいカットを切っているところから、これはアニメーターがコンテ割っているのかな?と思っていたら、やはり山内則康御自らのコンテであった。うーん、なるほど。

今回はアクションシーンも良かった。風呂場での藍華の乱闘シーンや、郷造がカラオケでデルモたちに襲われる場面など、作画もハッチャけていたし、絵コンテもハッタリを効かせまくっていて、面白かった。パンモロとメカニックに関してはリアリティ方向で、アクションシーンに関してはマンガ方向で、というのは、AIKaという作品の方向性としては非常に正しいように思う。

また、藍華ツイスターゲームをさせたり、艦長・副官が二人綺麗に並んで藍華にキックをしてくるところなど、随所に新世紀エヴァンゲリオン「第9話 瞬間、心重ねて」のオマージュが入っていて、それも嬉しかったな。

あー、あとあと、美少女リエの声を大谷育江があてているのも、ちょっとレア感があって、良かった。

AIKa リマスターBOX [DVD]

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