アイス・エイジ

2002年制作のアメリカ製CGアニメ映画。

文字どおり、氷河期を背景としており、3匹の動物+1人の人間の赤ん坊のバディ・ムービーという形を取っている。

アメリカ製アニメはあまり観ないのだけれど、たまに観るとやはり面白い。まず、脚本がしっかりしている。小さな子供が観ても、またどこの国の人間が観ても、スッと入っていけるような明快さ・分かりやすさがある。3匹の個性豊かなキャラクターたちの、それぞれ異なる目的や、心情の変化を描き分け、明確にキャラクターを立たせてあげている。また、起承転結のつけ方もくっきりとしている(キャラクターの紹介の導入部が済んだ後に、「赤ん坊を人間の村に連れて行くために、3匹が行動を共にする」という目的付けの設定を定め、その後にもともとは赤ん坊を同行2匹の隙を見て奪い去ろうという目的でついてきたのが、段々と赤ん坊に情を寄せるようになるというディエゴの心情の変化を描き、最後のクライマックスに繋げていくという流れ)日本アニメーションで、この作品のような明快な作りがされている作品は少なく、その点で見習うべき点がたくさんあるだろう。

また、アニメーションも素晴らしい。「動きで笑いを取るようなスラップスティック・コメディ」という観点でのアニメーション技術においてはアメリカは天下一品であり、日本はこの点においてアメリカに遥かに及ばない。「アイス・エイジ」で言えば、特に冒頭そして最後のスクラットが数々の自然災害に遭いながらも、めげずにどんぐりを追い駆けていくシーンを追った一連のシーケンスが素晴らしく、圧巻としか言いようがない。
氷の地面に埋まったどんぐりを引っこ抜いたら、地割れが起きて彼方にある大きな氷山を二分してしまい、大雪崩が起きてしまうという冒頭のシーンも、思い切った力技で気持ちよいし、何より作品のテーマの一つである「動物たちの生存競争」に繋がっているのが上手い。(最後、氷の中に閉じ込められたスクラットが、氷河期が終わって周りの氷が溶け、スクラットだけがどんぐりを追っかけた状態で氷の中に入ったままどこかの島に流され、氷が溶けて姿を現した後もどんぐりをそのまま追っかけていく、最後にはやはり地面にどんぐりを差すと地割れが起きて、彼方にある山を二分して、山が噴火してしまうという下りも、しつこくて面白かったな)

やっぱり、アメリカ製CGアニメって(と言うか、ハリウッド大作と言い換えるべきかもだが)、基本的には少年ジャンプなのだ。つまり、「友情・努力・勝利」(友情がかなりウェイト重め)なのである。それぞれ性格も立場もバラバラでお互いに「ウマが合わない」3匹の動物が、旅を共にすることで絆を深め合い、最後にはお互いに協力して一つのことを成し遂げるという展開は、アメリカの刑事ものなんかによく観られる、バディムービーの典型と言えるだろう。

典型ゆえに、「安心して観ていられる大作」という着地点にランディングしやすいパターンとも言えるが、逆に「都合が良く、コケオドシのアクションシーンだけが目玉の大作」というパターンを踏んでしまう危険性もある。残念ながら、「アイス・エイジ」はその危険は回避できなかったように思える。本来は動物たちの敵にあたる人間の赤ん坊を簡単に引き受けてしまうシドとマニーの心情がよく分からない。「なんとなく可哀相だから」とかの理由で引き受けているように見えちゃう。そのくせ、中盤に出てきた同じ動物仲間である鳥たちが目の前で何十匹も無駄死にしているところを目の前にしながらも、3匹ともそこは一切スルーだった。あろうことかマニーは鳥たちが崖から落下していく様を「食後の余興」と表現していたし。
明快である代償なのかもしれないけれど、そういった部分はやはり「浅く」見えてしまうんだよね。「結局は、人間の観点で都合よく氷河期の動物たちえを描いた話」のように観えてしまう。で、その「都合良さ」に欺瞞を感じて、せっかく観ている間は楽しく感じられていたのに、観終わった後にちょっと考えて、腹立たしくなってきたりしてしまう。

声優陣は、海外も、日本も、素晴らしかった。山寺宏一が素晴らしいのは自明だし、竹中直人の声が素晴らしいのも「パト2」などでアニメファンには周知の事実であったけれど、太田光ナマケモノのシド役にピッタリとした声をあてていたのは、収穫だったなぁ。また、海外でのシド役声優ジョン・レグザイモの声とよく似てるんだ。

アイス・エイジ」はよくできた作品だけれど、やはり「よくあるご都合主義のハリウッド大作」という枠は超えられない作品ではあると思う。(でも、それはそれでいいじゃん、とも思うけどね)