ああっ女神さまっ[OVA版] 第3話「BURNING HEARTS ON THE ROAD」

ああっ女神さまっOVA版の、スクルド登場回。

スクルドは、蛍一が入っている風呂の中から(正確には風呂桶のすぐ上から)登場するのだが、その際の水の表現が地味に巧かった。この場面に限らず、(演出や絵柄は措いておいて)ことアニメーションに関しては、クオリティの差がTV版とは一線を画しているよなぁ。(金のかけ方や製作期間がOVA版とTV版では異なるだろうし、当たり前と言えば当たり前なんだろうけれど)

スクルドが設計書を読んで、すぐにハードの強度とエンジン性能のバランスが悪いことを見抜き、最適解を図面に書き込んだのを、おやっ?と思った。ああっ女神さまっTV編第14話「ああっ対決という名の教育実習っ?」では、スクルドはエンジン性能の向上ばかりに腐心して、ハードの強度については一切関知できないという未熟さを露呈していた事を考えると、スクルドOVA版の方が賢いようだ。(もっとも「メカに関しては天才少女」というキャラ立ちのスクルドが、ハード強度を一切計算していない設計をするという愚を冒すというTV版の行動は、よく考えてみればあまり納得がゆく展開ではない。TV編はスクルドの成長譚を描こうとしていて、そのためにスクルドの未熟さを見せる必要があった、という意図は分かるのだけれどね)

落書きのような2頭身キャラの絵をコマ数の少ないアニメーションで見せるというエンディングの手法は、いかにもAIC作品らしくって(大運動会とかね)、興味深かったな。

あとは、蛍一に以下のセリフを喋らせていたことで、やはりスタッフが自覚的に「女神さまっ」は「理想的共同体の提示」を意識的にやっている作品であることが分かったのも収穫であった。
「いつまでこのままでいられるか分からないけれど、恵がいて、ウルドがいて、そして、スクルドがやってきた。色々トラブルもあるけれど、それをみんな楽しさに変えていけるのは、ベルダンディが俺のそばにいてくれるからなんだって思うんだ」

「ベルダンディと2人きりの生活」を希望するのではなく、「ベルダンディを中心として、恵やウルド、スクルドを肯定して、皆で仲良く暮らす生活」を肯定していくようなセリフであり、80年代「うる星やつら」以降のラブコメのあり方を象徴するようなセリフでもある。「女神さまっ」が「共同体バンザイ」作品であることは言わずもがなの事実ではあるけれども、他ならぬ蛍一にその事実を大肯定するようなセリフを言わせることに、スタッフの覚悟を感じて、個人的には嬉しい場面だった。